<第壱話>

ツアーミュージシャンをやっていた頃、移動の車内で音楽に聴き飽きていた私は小松崎純氏の勧めもあり、落語のカセットを手に入れたのでした。その演目は、三遊亭圓生師匠の「八五郎出世(妾馬)」「夏の医者」でした。圓生師匠の卓越された話術に感銘を受けた私は、それ以来すっかり落語への道へとのめり込んでいったのでありました。

<第弐話>

米米CLUBのツアーが多かった頃、金原亭馬生師匠にはまっていました。
テッペイちゃんの部屋で二人で正座してラジカセでよく聞いていたものです。
「あくび指南」「笠碁」「はないかだ」「品川心中」など...。

<第参話>

「なぜ落語が好きなのか?」と聞かれることがあります。笑うだけなら『漫才』でも『コント』でもいいわけで...(漫才もコントも好きですが...)。
日本酒好きが日本酒にこだわるように、その醸造の過程が大事なわけで、出来上がった製品の裏側を楽しみたいわけなのです。
私には吉原で(遊廓で)遊んだ経験もないし、当時の庶民の生活ももちろん知らないわけですが、落語によってその時代の背景が思い浮かばれるのです。
小さい頃母親に聞いた昔話のように、活字では表わせない話芸の世界を皆様に味わってもらいたいと思っています。

<第四話>

今回は、私またろうが今までに高座で演じた演目について紹介します。
『あくび指南』-1992(平成4)年11月18日 上野鈴本演芸場
初めて私が上野鈴本演芸場で演じた噺です。
天下太平が続く江戸時代にいろいろな商売が誕生しました。いろいろな芸事に飽きた主人公があくびの仕方を習いに行くという馬鹿馬鹿しい話です。
  おすすめは...古今亭志ん生、金原亭馬生
『猫の皿』-1994(平成6)年11月14日 上野鈴本演芸場
次に鈴本の高座に上がった時に掛けたネタです。
江戸後期、ほとんど刀も飾り物となった武士たちが掛軸や茶道具などを求め始めました。そのため古道具屋が掘り出し物を探しに地方へ行き、そこで起こった出来事を描いた話です。
  おすすめは...古今亭志ん生
『禁酒番屋』-1996(平成8)年2月2日 国立演芸場
ついに憧れの国立演芸場に上がった時の噺です。
大名の一存で禁酒令がしかれたとある藩の物語。大酒飲みのお武家さんが何とか自宅に酒を持ち帰ろうと酒屋に頼みこみ、酒の持ち帰りを検める『禁酒番屋』を何とか通り抜けようと知恵を働かせる話。
  おすすめは...四代目柳屋小さん、立川志の輔
『井戸の茶碗』-1997(平成9)年6月22日 日暮里サニーホール
日暮里サニーホールで演じた噺で、またろう自身はじめての人情話。
くず屋の清兵衛さんが、ひょんなことから買い取った仏像をめぐっておりなす人間模様。下げのくだりではあなたも涙を流さずにはいられないはず...
  おすすめは...古今亭志ん朝。

<第五話>

またろうおすすめのこの一席(その1) 『妾馬』

妹が殿様の即室に迎えられた兄 八五郎が織り成す人情話。
八方破れの八五郎が酒の勢いを借りて、家族の愛情と結束を訴えるくだりが聞きどころ。
  おすすめは...古今亭志ん生
       三遊亭圓生(『八五郎出世』)

<第六話>

またろうおすすめのこの一席(その2) 『芝浜』

道楽好きの商人が、ある朝時間をまちがえて芝の浜に仕入れに出かけたのをキッカケにおこる人情話。
誰もいない芝の浜で財布を拾った主人公が、あぶく銭が入ったと仲間を呼んで飲めや歌えのドンチャン騒ぎ。酔っ払って寝込んだところをおかみさんに起こされる。このドンチャン騒ぎのつけはどうするの?と責めよられる妻に、財布を拾ったから大丈夫と居直る主人公。ところが妻にそれは夢の中の出来事で実際は財布など拾っていないと諭され、残った借金を返すため酒を断ちひたすら仕事に打ち込むという話。最後のどんでん返しに乞うご期待!
  おすすめは...先代 桂三木助
       柳家小三治

<第七話>

またろうおすすめのこの一席(その3) 『火焔太鼓(かえんだいこ)

道具屋の甚兵衛さんはいつもつまらないものばかりを仕入れてきます。ある日汚い太鼓を仕入れてきてかみさんからサンザ小言を言われ、店先でホコリをはたきながらドンドン叩いていると、偶然通りかかったお大名様から いい音がするので屋敷へ持ってくるように言われます。おっかなびっくり太鼓を持っていくとその太鼓が『火焔太鼓』という世に二つという名器だと聞かされ法外な値段で売れます。この後のおかみさんとのやりとりが絶妙の一席。
古今亭志ん生を知るうえで避けては通れない噺。

つづく


ギター小僧の逆襲 / tokkuri酒とわたし


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